釣り日記 1話

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僕は自分で言うのもなんだけど他の人に比べておとなしい気質で、特に何がなくてもニコニコしているような顔つきだからか昔からよく道すがら人に声をかけられるような子供だった。

「おはよう、今日も元気だな!」

と、鼻水を垂らしているのにもかかわらず、通りすがりのおじいさんがあいさつしてくれる。

「ボク、今日はカレーなのかな? 楽しみね~」

と、レジのおばさんに話しかけられる。そのとき僕は愛想笑いをして母親の影に隠れた。その日の僕のリクエストはクリームシチューだ。

「おいちょっと消しゴムつかわして」

あんまり仲良くないクラスの女子にだって消しゴムを貸せと頼まれる。この女子は半ば無理やり消しゴムを持っていった。まだ新しい、魚の形のかわいい消しゴムなのに。

そんな具合に、いろいろな人からいろいろなことを話しかけられ、時には損なことまで持ちかけられる人生なんだろう。僕はそう思っていた。

なお、魚の形の消しゴムは頭が半分無くなって帰ってきた。

ある日のこと。僕の携帯電話に、あまり仲良しというわけでもないクラスメイトからメールが来た。

小学生でも、もうPHSや携帯電話を持っている時代だ。

件名は「☆.・.☆幸☆福☆の☆メール☆.・.☆.」だ。

なんだか見たことある文章だな。

「☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆このメールを受け取ったアナタは超ラッキー!!!(*^▽^*)このメールを3日以内に3人の人に転送してください(;^ω^)すると、アナタにものすごくハッピー☆なことが起こります!!(^_-)-☆」

友達とやりとりするときも顔文字はよく使うが、このメールはずいぶんと顔文字が盛り込まれている。

「今すぐ転送すれば、幸せを友達にも分けてあげられます!!! 宝くじや、恋愛にも効き目があります!!! ただし、もし誰にも転送しないと逆に重大な不幸が訪れるかも・・・【死】((+_+))」

のんきな僕だって不幸の手紙は知っていた。でも、現実にはそんなものは回ってこなかったし、回ってきても次の人に回すことはすべきではないと思っていた。しかし、このときこの「ハッピー感☆」のあるメールの前では、そんな理性は働かなかった。

めっちゃ急いで、仲のいい友達の中島にメールを転送した。もう回ってきたかな? あとは誰にしようかな。誰が携帯持ってたっけ?

するとすぐに返信が来た。中島からだ。

「おまえ、そんなのに引っかかってんじゃねーよ」

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